栄養や筋収縮/運動による細胞機能の修飾機構

 骨格筋は、体重の半分近くを占める人体最大の器官であり、身体運動やエネルギー代謝において重要な役割を担っています。近年では骨格筋の量や機能が生活習慣病の罹患率や認知機能、さらには死亡率や寿命にも関わることが明らかになってきており、骨格筋の量や機能を保つことの重要性が認知されてきています。
 栄養や筋収縮は、骨格筋の量や機能の調節に関わることが広く知られています。例えば、筋収縮は、持久性運動のような低強度長時間筋収縮によるエネルギー基質利用能の向上などのマラソンランナーのような適応から、レジスタンス運動のような高強度短時間筋収縮による筋肥大などのボディビルダーのような適応まで、骨格筋においてその負荷強度や刺激時間に応じて幅広い適応を生み出すことができます。しかし、骨格筋がどのようにして栄養や筋収縮による様々な刺激を読み取り、刺激に応じて細胞の大きさや機能を変化させるのかは多くが不明です。我々の研究室では、主に以下の研究テーマに取り組むことで骨格筋の量・機能の調節機構を解明し、その画期的な改善手法を開発することで老化の克服や身体機能の改善に貢献していきたいと考えています。

1. 骨格筋におけるタンパク質の代謝制御・品質管理と筋原線維形成の分子メカニズム

 骨格筋の量と機能を維持するためには、常に新しいタンパク質を作り(合成)、古くなったタンパク質を廃棄(分解)する必要があります。この時、合成の速度に加えて合成されたタンパク質の品質や筋原線維形成の過程が骨格筋の量と機能の調節において重要なことがわかってきていますが、その詳細なメカニズムは多くが不明です。我々の研究室では、これらのメカニズムが加齢に伴う骨格筋量・機能の低下やその改善・克服手段としての運動の効果に関わるのではないかと考え、幅広い視点から基礎研究を進めています。現在は主に以下の研究を進めています。

◎骨格筋mTORの役割と栄養・筋収縮センシング機構(詳細はクリック)

骨格筋mTORの役割

  •  mTOR(Mechanistic Target of Rapamycin)は、栄養・エネルギー状態、成長因子や様々なストレスに応じて細胞の大きさや増殖を調節する鍵酵素であることが知られています。細胞内においてmTORは機能の異なる2種類のタンパク質複合体(mTORC1とmTORC2)を形成して存在しており、これらの複合体は形成状態や局在を変えることで活性レベルを調節していることが知られています。このうち、mTORC1がタンパク質合成の調節に関わり、細胞の大きさ調節に関わることがわかっています。
  •  筋収縮は、インスリンやアミノ酸と同様に骨格筋mTORC1を活性化させることが知られています。したがって、筋収縮によるmTORC1の活性化によって骨格筋におけるタンパク質合成が促進されると考えられていました。しかし、筋収縮によるmTORC1の活性化を抑制してもタンパク質合成は十分に促進することが我々を含めた複数の研究グループによる報告からわかってきました(Philp et al. J Physiol 2015, Ogasawara et al. Sci Rep 2016, West et al. J Physiol 2016, Ogasawara and Suginohara. FASEB 2018, You et al. FASEB 2019)。一方、我々はmTORの酵素活性を抑制することで(mTORC1もmTORC2も抑制)筋収縮によるタンパク質合成を完全に抑制できることを明らかにし、mTORC2もしくは未知のmTOR複合体がタンパク質合成の調節に関わる可能性を報告しています(Ogasawara and Suginohara. FASEB 2018)。現在、mTORが骨格筋においてどのように筋収縮によるタンパク質合成の促進を調節しているのか調べています。
  •  また、近年はmTORC1がタンパク質の品質管理において重要な役割を果たしていることがわかってきています。我々は、合成後のタンパク質の品質管理におけるmTORC1の役割についても検討を進めています。

骨格筋mTORの栄養・筋収縮センシング機構

  •  インスリンやアミノ酸によるmTOR複合体の形成状態や局在の変化がその活性調節において重要なことが一般的に知れらています。しかし、筋線維(筋細胞)は一般的な細胞とは異なり、細胞膜の内側に収縮タンパク質がびっしりと詰まった特殊な構造をしています。本当に一般的な細胞でのメカニズムと同じようにインスリンやアミノ酸刺激に呼応してシグナル伝達が行われ、複合体の形成状態や局在が変化するのでしょうか。
  •  また、骨格筋でのインスリンやアミノ酸によるmTOR活性化が不明なだけでなく、筋収縮によるmTORの活性化メカニズムも多くが不明です。我々は、筋収縮がインスリンやアミノ酸と共通したメカニズムでmTORを活性化するのか、もしくはそれらとは独立したメカニズムでmTORを活性化しているのか、主に局在に注目して研究を進めています。

◎栄養・筋収縮に呼応するタンパク質合成の特異性(詳細はクリック)

栄養・筋収縮に呼応するタンパク質合成の特異性

 我々の研究室では、栄養や筋収縮によって骨格筋タンパク質合成が促進される際にタンパク質特異性があるのか否か(どのようなタンパク質が合成されているのか)調べています。特に、筋肥大や持久性能力の向上といった異なる骨格筋適応が生じる筋収縮のプロトコルを用いて、合成が増加するタンパク質の差異やそのメカニズムについて調べています。

◎ミオシン分子シャペロンの役割(詳細はクリック)

ミオシン分子シャペロンの役割

準備中。。。

2. レジスタンス運動の基礎研究(分子筋トレ学)

 骨格筋の量と機能を改善するレジスタンス運動(筋トレ)について、我々が確立した小動物のレジスタンス運動モデルと生化学・分子生物学的手法を用いて研究を進めています。経験則によって確立された理論について、分子レベルでのエビデンスを提供するとともに、メカニズムに基づいた新しい理論を構築することを目指しています。また、生活習慣病などに対する筋トレの効果についても調べています。

3. 骨格筋量・機能改善手法の開発

 

◎筋トレ模倣食品・薬の開発(詳細はクリック)

準備中。

◎運動に対する同化抵抗性改善手法(詳細はクリック)

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◎食生活習慣と筋トレの効果(詳細はクリック)

準備中。。。